初夏の夕暮れは、春よりもいくらか現実的で、それでいて妙に人を心細くさせる。梅雨にはまだ早い湿り気を含んだ風が町を撫で、昼間の熱の名残が、舗道の上にぼんやりと滞っていた。私はその日、用事もないのに川沿いの道を歩いていた。水面は鈍く光り、向こう岸の草むらでは、名も知れぬ虫が絶え間なく鳴いていた。その単調な声を聞いていると、何かを待っているような気がした。しかし実際には、待つべきものなど、もう何も残っていなかったのである。

ふと、あの頃のことを思い出した。君と並んで歩いた、まだ若かった季節のことを。夕立のあとの匂い、汗ばんだシャツの肌触り、コンビニで買った冷たい炭酸水、そうした瑣末なものばかりが、かえって妙にはっきりと残っている。肝心の言葉は、ほとんど思い出せない。けれども、笑いさえすれば何かが許されるように思っていたあの浅はかさだけは、今も苦いまま胸に沈んでいる。

空はまだ明るいのに、心の中ではとっくに日が落ちていた。初夏というものは、何かが始まる季節であるより、むしろ取り返しのつかぬものの輪郭を、湿った光の中にじわじわ浮かび上がらせる季節かも知れない。川面を渡る風は生ぬるく、遠くの電車の音はひどく孤独だった。私は立ち止まり、暮れきらない空を見上げたが、そこには慰めらしいものは何一つなかった。ただ、過ぎ去った時間だけが、薄青い色をして静かにひろがっていた。